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   オープン化が求められている物流の分野は、大きなブレークスルーポイントが見出せずにいるのが現状だ。そんな中、ICタグが物流を変える技術のひとつとして注目されている。ICタグは転換の起爆剤になり得るのか? これまでの物流とそこに必要とされる新しい技術について、慶應義塾大学環境情報学部 助教授/オートIDラボ副所長の中村修氏と、慶應義塾大学環境情報学部 専任講師の重近範行氏に話を聞いた。
 「物流に関する事柄だけではありませんが、ビジネスの大きな流れとして囲い込み重視からオープン化への動きが起こっています。これまでのSCMがクローズドな環境であったのに対し、インターネットはオープンな環境です。この両者が利益を求めて綱引きをした結果、エンドユーザーが十分なメリットを得られない状態が生まれているのです」と中村氏は語る。
 物流の世界は、10年単位で大きな転換が行われてきた。1970年代の物流管理システムは、各企業でクローズドなものだった。ここにダウンサイジングの波が押し寄せ、集中管理体制からネットワークの分散化が推し進められた。次の80年代はメインフレームからワークステーションを核にしたネットワークシステムへの移行が促されたものの、専用線を使用するなど企業・機器間の相互接続についてはまだ実現されなかった。90年代に入って、ネットワーク機器の個別入れ替えを可能にすることを含めた、オープン化の必要性が指摘されるようになった。そして2000年代となり、オープンな世界が基本となる下地が出来上がったのである。
 これまでクローズドだったシステムがオープン化するなかで、もっとも注目されたのが機器の相互接続性の確保だ。特にマルチベンダーでの相互接続性は、実証テストによって確かめることがなにより重要であり、NetWorld+Interopもそこに大きく貢献してきたと言える。
 しかし、これまでの物流システムでは、単にインターネットと連係しても効果が薄いと中村氏は言う。「Webの在庫管理システムなどが注目されていますが、実は物流側と企業側で管理システムが統一されておらず、二重構造になっているのです。この状況を変えることが、インターネットによってシステムを相互接続するメリットの拡大につながります」
 そして、この状況を変える可能性を持っているのが、ICタグだと中村氏は言う。
 「オートIDラボでは、ICタグとオープン化したネットワーク環境を組み合わせて、ユーザーサイドに立った仕組みの構築について研究しています。この流れを通じて、SCMやロジスティクスサイドの技術者が新しいビジネスの可能性に気づいて欲しいと考えています」
 在庫管理や物流管理のシステムが、ICタグの導入で個別管理から相互管理の形態に変化する。その中で、ICタグを使った新たなアプリケーションやソリューションの開発が期待される。そこでは、既存のSCMとインターネットが、ICタグを媒介役として歩み寄ることになるだろう。
 同時に求められているのは、ICタグの可能性を、物流とネットワーク開発双方の関係者に深く理解してもらうことと、視点の共有化だ。
 「IT側の担当者は、物流側の担当者が求めているものを想像で考えていると思います。両者が直接出会うことで、それぞれの立場の技術者が自分の視界に入っていなかったものを認識できるようになることが大切です」(重近氏)
 互いの認識を深める上で、それぞれが実際にソリューションやアプリケーションを見ることが重要であると重近氏は続ける。IT側の担当者が物流の現場に対する理解を深めることが大切であるのと同様に、物流側の担当者も今後を見据えたIT技術への理解が求められていくのは間違いない。高速なネットワーク、高度なセキュリティなどをどうしたら実際に導入して活用できるのか。それは机上のものではなく、実証的な知識として得る必要があるだろう。
 すでにアメリカをはじめ、各国でICタグの実証実験が行われている。中村氏はそれらを視察することで、自身の経験として精力的に蓄積し続けている。  「スペックを見るだけでなく、自分で見た経験が重要です。経験がない状態では、結果として騙されたと感じることも少なくありません。人が実際に使っているものを見ることで、安心したり選択できる下地が作られていくのです」
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