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   建設分野では、実際に施工を担当する現場が日本全国に点在しており、情報を共有しにくい面がある。改善策としてインターネット上でセキュアな通信を可能にする「SSL-VPN」技術が注目されている。いち早くこの技術を取り入れた戸田建設株式会社の土木企画室情報課 主任 佐藤郁氏と、同社が採用した指紋認証システムを開発した京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下KCCS)のセキュリティ事業部 技術部長 郷間佳市郎氏に話を聞いた。
 「会社全体の4〜5,000人の社員の中で、約3,000人がテンポラリな作業現場で働いています。インターネットVPNによる高速ネットワークを導入する以前は、現場が本支店の支援を待つしかありませんでした」と佐藤氏は語る。
 土木作業の現場において、計画通りに作業が進むケースは少なく、気象状況の変化やまったく違う地層が出てくるといった問題が頻発する。
 現場解決が難しい問題が発生した場合には、電話やファックスで状況を説明し、専門技術者が必要と判断されれば本支店から担当者が現場へ急行していた。同一支店内でも現場まで何百キロもあったり、本社からでも1日かかるケースもある。自然災害など緊急を要する場合はもちろん、時間的に余裕がある場合でも、何らかの結論が出るまで現場は作業を変更せざるを得ず、スケジュールや生産性に大きく影響が出る。
 この問題を解決するために、インターネットを利用した情報伝達のシステムが提案された。しかし社内ではインターネットに接続することでセキュリティが確保できないという不安の声が大きかった。そこで、佐藤氏はインターネットVPNを導入した際にID/パスワードの認証に加えて、接続するPCのIPアドレスをすべて固定した。誰が、いつ、どのPCから、どの情報にアクセスしたかを特定できるセキュアな環境を構築し、オープンなインターネットを利用しつつ従来よりも高い保全性を実現したのである。こうして利便性とセキュリティとコストダウンという難しい問題をクリアしたわけだ。
 しかし、個々の現場におけるやり取りが高速化され、情報交換が活発化する一方で、出張中の社員や合同プロジェクト(ジョイントベンチャー、JV)の構成員として働いている社員や出向社員、海外の社員はブロードバンド化から取り残されていた。
 そこで佐藤氏が提案したのが、SSL-VPNを使ったネットワーク構築だ。SSL-VPN導入以前は、これらの社員はダイヤルアップによって現場と本社の情報伝達を行っていた。この方法では接続相手の電話番号は特定できるものの、どのPCが接続しているかについては確認できずセキュリティの盲点となっていた。また、ホテルや空港のインターネットサービスや無線LANのアクセスポイントが手近にあっても、PHSを使わなければならなかった。
 「現場が設計と違っていても、その場で発注者に電子メールに精細な写真を添付して送付すればすぐに判断を仰ぐことができます。昔は発注者が現場に来て確認が取れるまでの間作業が止まり、スケジュールに影響が出ていました。この点だけを見ても、SSL-VPNネットワークの導入以前と比べて、生産性は大きく違ってきています」(佐藤氏)
 ネットワークの共有化は別のメリットも生み出している。海外現場での作業や、他の会社とのジョイントベンチャーなど、会社から離れた場所での情報断絶を防ぐというメリットだ。佐藤氏は実体験から、会社との情報断絶をこう語る。
 「ジョイントベンチャーの現場では、個々の会社名でなく幹事会社名で呼ばれます。自分と会社との繋がりがあいまいになり、不安になる社員も多いんですね。しかし、いつでも社内のネットワークにアクセスでき、自分宛の電子メールを読んだり社内のHPを閲覧できることで安心感が得られるのです。また、会社のメールを社員のプライベートな電子メールアドレスに転送する必要がなくなるので、社内情報の漏えいという点でもセキュア度が高まったと言えますね」
 ここで注目したいのは、よりセキュリティを保つために指紋認証のシステムをいち早く導入していることだ。佐藤氏が以前のNetWorld+Interopで見て以来、いつか導入することになると考えて継続的に調査していたという。今回のシステムを提供したKCCSの郷間氏は、次のように話す。
 「単純なID/パスワード認証では、それ自体盗難にあった場合の損失を防ぐことは容易ではありません。指紋認証を利用して個人を特定することができれば、セキュリティに対する不安を減らすことができます。ただ、現状では接続できる機種やOSなど、残念ながらいくつかの制約があることも確かです。この制約を解消していくことで、より広範な現場でセキュアなネットワークを提供できると考えています」
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